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蛍光の定義
本ページで解説する蛍光とは、鉱物に紫外線を当てた場合、その鉱物が光る現象を指します。
蛍光を示す鉱物
蛍光を示す鉱物は数多くあり、本教材で扱っている鉱物はほぼすべてが蛍光を示します(ただし、同じ鉱物であっても、ものによって蛍光しないものもありますので、蛍光の観察目的で購入する際などは注意が必要です)。身近な鉱物であれば、ダイヤモンドやオパールなども蛍光を示します。
蛍光の原理
簡易的な説明
これはエネルギーの高低を場所の高低に準えた電子の動きのイメージ図です。
紫外線は波長が短い分、高いエネルギーを持ちます。そのため、紫外線が当たるとその物質の電子のエネルギーも高くなり、エネルギーを蓄えます(高い位置に移動するイメージ)。ただし、この位置は不安定なため、電子は元の安定した位置まで落ちようとします。このとき、電子が持っていたエネルギーが、熱のほかに、光エネルギーとして放出されます。これが蛍光として見えるのです。
詳しい説明
蛍光の原理は、バンド理論によって説明できる。 図中の用語の意味は次の通りである。
価電子帯:電子が充満しているバンドのこと。同じ結晶中の最外殻の電子がとるエネルギーは、すべて異なる(パウリの排他理論)。この最外殻電子がとるエネルギーの幅とも考えられる。 禁止帯:価電子帯と伝導帯にあいだにあるギャップのこと。 伝導帯:価電子帯・禁止帯よりエネルギーが高い位置にある、電子があまり存在しないバンドのこと。
鉱物に入り込んだ不純物は、結晶中の禁止帯に電子を持つ。この位置を不純物準位という。また、着色を誘起するため、色中心でもある。この不純物準位にある電子が遷移することによって蛍光が起こる。
まず、図中の①のように、Aの準位に入っていた電子が、紫外線によって伝導帯まで励起される。しかしこの位置では不安定なため、②のように、安定している禁止帯まで戻ろうとする。この時に熱及び光エネルギーが発せられ、それが私たちの目には蛍光しているように見える。③のように、Aの位置まで落ちることもあるが、この際は紫外線に近い光を放出するため、蛍光として視認できない。
テネブレッセンス
蛍光のほかにも、紫外線によって鉱物の色が変わる現象として、テネブレッセンスがあります。テネブレッセンスを示す鉱物の一つにハックマン石があります。当サイトのハックマン石のページにて、テネブレッセンスした鉱物の3Dモデルやテネブレッセンスに関する解説を見ることができます。
スペクトルとは
どの波長(色)がどの程度の割合で含まれているのかを表したものです。本教材では、どの波長がどの色に対応するのかの目安は、各スペクトルの下部に表示しています。どの波長(色)が一番強いのか、波長(色)の強度(強ければ強いほど明るい)や、ピークの幅(鋭さ)などの情報から、色の特徴をつかむことができます。
教材内用語の解説
母体結晶
鉱物から不純物を取り除き、純粋な物質としたときの組成のことです。
アクチベーター
鉱物に入り込んだ不純物で、発光要因となる元素のことです。
結晶系
鉱物は同じ原子配列が繰り返し規則正しく並んでいます。基本の大きさである「単位格子」の形態にグループ分けしたものが晶系です。
結晶軸の角度と軸の長さに応じて、次の7つに分類されます。
- 立方晶系(等軸晶系):3本の結晶軸の長さが等しく、すべて90度で交差している。
- 正方晶系:3本の結晶軸のうち2本の長さが等しく、すべて90度で交差している。
- 直方晶系:3本の結晶軸の長さがそれぞれ異なり、すべて90度で交差している。
- 単斜晶系:3本の結晶軸の長さがそれぞれ異なり、このうち2本が90度で交差している。
- 三斜晶系:3本の結晶軸の長さがそれぞれ異なり、3本とも90度以外の異なる角度で交差している。
- 三方晶系:3本の結晶軸の長さが等しく、すべて90度以外の同じ角度で交差する。
- 六方晶系:4本の結晶軸のうち3本が同じ長さで、60度で交わる。残りの1本は異なる長さで垂直に交わる。
また、結晶構造を持たず、規則性のないものを非結晶質(アモルファス/非晶質)という。オパールなどがこれにあたります。
モース硬度
ひっかいたときの傷のつきにくさを基準とした、硬さの尺度のことです。下記がモース硬度と標準鉱物です。
- モース硬度1:滑石 (最も軟らかい鉱物。爪で簡単に傷をつけられる)
- モース硬度2:石膏 (指の爪で何とか傷をつけることができる)
- モース硬度3:方解石 (硬貨でこするとなんとか傷をつけることができる)
- モース硬度4:蛍石 (ナイフの刃で簡単に傷をつけることができる)
- モース硬度5:燐灰石 (ナイフでなんとか傷をつけることができる)
- モース硬度6:正長石 (ナイフで傷をつけることができず、刃が傷む)
- モース硬度7:石英 (ガラスや鋼鉄などに傷をつけることができる)
- モース硬度8:トパーズ (石英に傷をつけることができる)
- モース硬度9:コランダム (石英にもトパーズにも傷をつけることができる)
- モース硬度10:ダイヤモンド (地球上の鉱物の中で最も硬く、コランダムにも傷をつけることができる)
標準鉱物と試料をこすり合わせ、傷ができるかどうかで硬さが測定されます。